公示地価 住宅地9年ぶりに下げ止まり 大阪の商業地は好調キープ
2017/03/27
国土交通省はこのほど、全国の土地の価格を示す公示地価(平成29年1月1日時点)を発表した。
それによると、全国全用途平均の地価が前年比で0.4%上昇し、2年連続の上昇となった。注目したいのは住宅地の全国平均だ。前年の0.2%下落から横ばいに転じ、リーマン・ショックが起きた平成20年以来、9年ぶりに下げ止まった。商業地の平均は1.4%上昇となり、前年(0.9%上昇)に引き続き、全体の地価を押し上げている。
国土交通省では、住宅地について「全国的に雇用情勢の改善が続く中、住宅ローン減税などの施策による住宅需要の下支え効果もあり、地価は総じて底堅く推移しており、上昇の継続や下落幅の縮小が見られる」と分析。
また、商業地については、①外国人観光客の増加などによる店舗やホテルの需要の高まり、②再開発事業等の進展による繁華性の向上、③主要都市でのオフィス空室率の低下などによる収益性の向上、といった背景から「不動産需要は旺盛で、地価は総じて堅調に推移している」との見方を示している。
なお、工業地も全国的な需要の回復にともない、昨年の横ばいから0.3%の上昇となった。特に、インターネット通販の普及なども影響して、一定の需要が見込める地域では大型物流施設の需要が旺盛。高速道路のインターチェンジ周辺など、物流施設の建設適地などが上昇基調で推移している。
東京・大阪・名古屋の三大都市圏をみると、東京圏の住宅地は0.7%上昇、商業地は3.1%上昇。大阪圏の住宅地は横ばい、商業地は4.1%上昇。名古屋圏の住宅地は0.6%上昇、商業地は2.5%上昇。三大都市圏の平均としては、住宅地が0.5%上昇、商業地は3.3%上昇となった。
●最高価格は銀座「山野楽器」、商業地の上昇率は大阪が上位を独占
今回の地価公示で特徴的な動きを示した地点を見てみる。まず、全国最高価格地点は、東京・銀座4丁目の山野楽器銀座本店で1平方メートル当たり5050万円(変動率25.9%)。高額地価ランキングでは、1~4位がすべて銀座周辺で、中央通り・晴海通り周辺では複数の建替え計画もあり、繁華性の一層の向上が期待されている。
住宅地において上昇率1位だったのは、宮城県仙台市若林区白萩町260番で、前年比12.3%増となった。ここは、薬師堂駅の近くに置かれている地点で、平成27年12月に地下鉄東西線が開業し、新駅から徒歩圏内の住宅地域では利便性が向上したことで、地価が大きく上昇した。住宅地の上昇率トップ10を見ると、仙台市が7地点を占めている。なお、住宅地における最高価格地点は、東京・千代田区六番町で1平方メートル当たり375万円(変動率7.8%)だった。
商業地の上昇率では、外国人旅行者で賑わう大阪市が1~5位を独占。第1位は、大阪府大阪市中央区道頓堀1丁目のふぐの店「づぼらや」で、変動率は41.3%だった。ここ数年、大阪市では外国人旅行者の増加などを背景に店舗やホテル向けの土地需要が高まっており、地価を大きく押し上げている。
一方、地方圏をみると、地方4市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)で、地価の値上がりが顕著になっており、すべての用途で三大都市圏の平均を上回る上昇を示している。札幌市の住宅地は2.0%上昇、商業地は6.1%上昇。仙台市の住宅地は4.0%上昇、商業地は9.0%上昇。広島市の住宅地は1.9%上昇、商業地は4.7%上昇、福岡市の住宅地は3.5%上昇、商業地は8.5%上昇。なお、地方圏のその他の地域では、平均変動率は減少しているものの、すべての用途において下落幅は縮小している。